ビジネスを取り巻く環境がどんどん予測困難なものになっていくなか、マネジメントの重要性は日々高まっていると言って差し支えありません。
その反面、「マネジメントとは何か?」との問いに対して明確に答えられる人が増えていないこともまた事実です。
確かなマネジメントの実践には、その本質を早期に理解し、試行錯誤をくり返す以外に近道はありません。
本記事では、そのような問題意識のもとで設計するマネジメント研修について、マネジメントの本質や多くの新任管理職がつまずくポイントなどに触れながら詳しくお伝えします。
マネジメントは「管理」と翻訳されるのが一般的です。
組織マネジメントとは組織「管理」であり、だからこそマネジメントを担うマネジャーは「管理職」と呼ばれるのです。
とはいえ、マネジャーとはいったい誰の何を管理する存在なのでしょうか。
部下の日々の行動でしょうか、あるいは日々の仕事の進捗でしょうか。
管理すべき対象は目的によって大きく異なります。答えは決して一様ではありません。
だからこそ、管理の目的をしっかりと見定めておくことが重要になってきます。
一般的な企業を念頭に置いて言うならば、管理の目的とは組織として「成果」を出すことです。
売上アップ、新規顧客の獲得率向上、あるいは適正な業務運営。
どんな組織にも必ず目標があり、その実現に向けて組織のすべてを管理することがマネジメントなのです。
合法的なものであれば、実現のための手段は何であっても構いません。
世の中にはマネジメントスキルについての解説が氾濫していますが、スキルはあくまで手段であって目的にはならない点、注意が必要です。
組織として成果を出すために、日々の部下の行動や仕事の進捗を細かくチェックするケースが少なくありません。
もちろん、チェックはマネジメントの1つの要素として必要なものです。
しかし、それですべてではありません。
どれだけ細かく部下の課題を指摘したところで、チェックの結果が成果につながらなければマネジメントは機能していると言えないわけです。
過去を振り返るための「ダメ出し」ではなく、未来志向で「何かできるか」を考える。この視点がとても重要です。
マネジャーは組織を掌握すべき立場にあるといえますが、仮に状況をすべて把握できたとして、それをすべて自分の思い通りにコントロールすることなど不可能です。
にもかかわらず、そうしたコントロールに必死になる管理職もまた少なくないのが現状です。
さらに言うと、どんなに優秀なマネジャーであっても、一人で状況をすべて掌握できる可能性は限りなくゼロに近いといえます。
状況に応じたベストを模索する柔軟性が管理職には求められているということです。
プライベートでうれしいことがあると仕事がはかどる。大好きなアーティストのライブに行く日には定時に仕事をきっちり仕上げる。
このように、アウトプットの質はモチベーションの高さと正比例の関係にあります。
モチベーションの高い部下が多ければ、組織としてのアウトプットもまた同様に質の高いものとなるわけです。
その意味で、マネジメントとは、部下のモチベーションをしっかりと引き出す作業に他なりません。
組織として常に質の高いアウトプットを維持し、期待される成果につなげる。まさにそれこそが、マネジメントの本質であると言って差し支えありません。
マネジメントスキルとは必然的に、部下の高いモチベーションを引き出す力だと理解することができ、その根幹には「1 on 1」を基本とする対話があります。
マネジメントが「管理」すべき対象とは大切な部下のモチベーションに他ならず、それはチェックでもコントロールでもなく良質なコミュニケーションによってこそ実現するのです。
多くの管理職研修では、「管理職は部下にとっての模範となるべき」というマインドセットを何より重視しているように感じます。
確かに率先垂範の意識は大切ですが、管理職も一人の人間であり、すべてを完璧にこなすことなどできません。
この意識が強すぎると自分のモチベーションが大きく低下し、先に見たようにアウトプットの質にマイナスの影響を与えます。
組織の雰囲気も暗くなり、部下のモチベーションも下がってしまう恐れがあると言わざるを得ません。
組織として成果を出すために、どんなことも見逃さず管理することが大事。そんな意識もまた、管理職として自らを苦しめる結果につながります。
先ほども見てきたように、一人のマネジャーが組織のすべてを掌握するのは不可能です。
大切なのは、部下の自主性を尊重しつつ、部下自らが「やります」と言える環境を整える点にあり、すべてを自分がコントロールすることではありません。
統制的なマネジメントは緊急時を除きアウトプットの質を低下させる結果を招くのです。
現代は人々の価値観が非常に多様化した時代です。
これは会社という組織についても同じで、同じ場所で机を並べて働いているからといって、常に同じことを考えているわけではありません。
このことを忘れ、1つの価値観=自分だけの価値観で組織をまとめようとする管理職が今もなお少なくない現実があります。
さまざまなアイディアの芽を摘むだけでなく、部下のモチベーションを大きく低下させてしまう点でもマイナスの効果しかないことを理解する必要があります。
モチベーションを引き出すには対話が重要であることを見てきました。
対話の本質とは双方向のコミュニケーションであり、お互いの想いを率直に開示しながら、部下の「やります」という意志を引き出すことを目指すのが対話の目的です。
これが対話とは名ばかりの「指示」になってしまうと、部下の管理職に対する想いは不信感へと近づき、モチベーションが低下することでアウトプットの質にも強いマイナスの影響が生じてしまいます。
上記のようなつまずきは、特に新任管理職に多く見られるものといえます。
つまずきを回避し、管理職としての役割をしっかりと発揮していくためには、過度に「模範」であろうとする呪縛から、まずは管理職自身を解放する必要があります。
自ら掌握する部分と部下の自主性に委ねる点のバランスに配慮すること。
それはつまり部下から「やります」を引き出すことと同じであり、すべてを自分で背負う必要がないことを理解するところから研修を始めるのが好ましいと言えます。
部下が抱える多様な価値観に対応することで、高いモチベーションをしっかりと引き出すことが可能となります。
多様性を尊重する姿勢を身につけるためには、何よりもまず、自分とは明らかに異なる価値観がそこにあることを理解する必要があります。
グループワークなどを活用し自分とは異なる意見に触れることが大切であり、研修全般を通じてワークをふんだんに取り入れ、議論の時間を積み重ねることで、多様性の尊重につなげていきます。
マネジメントの基盤となる対話は、「自己開示」「傾聴」「引き出す」という3つのステップからなる良質なコミュニケーションに他なりません。
これらのステップを十分理解し、実践へとつなげていくメニューを用意することが重要になってきます。
実践力の向上にとっては、日々の仕事の場面を意識したワークの導入などが非常に効果的です。
実際に起こり得る課題をどう解決していくのか。そのための対話のあり方をワークを通じて深掘りしていきます。
上記に記載した効果をもたらすマネジメント研修について、弊社では以下のようなプログラムをご用意しています。
お客様のご要望に応じて内容をカスタマイズすることも可能ですので、まずはご遠慮なくお問合せください。
ここまで、マネジメントの本質などに詳しく触れながら、新任管理職がつまずきがちなポイントを深掘りし、それらを回避するための研修設計について見てきました。
管理職とは万能な存在との認識を改め、部下のモチベーションを基軸としながらアウトプットの質を管理していく存在という理解を得ていただくことができたとすれば幸いです。
その先の研修設計につきましても、ぜひとも弊社へお声がけいただければと考えております。